9月30日決算特別委員会農林水産分科会で質疑するつつみ県議
平成21年度大分県一般会計歳入歳出決算の認定について
平成21年度大分県流通業務団地造成事業特別会計歳入歳出決算の認定について
平成21年度大分県臨海工業団地帯建設事業特別会計歳入歳出決算の認定について
平成21年度大分県港湾施設整備事業特別会計歳入歳出決算の認定について
平成21年度大分県工業用水道事業会計決算の認定について
10月22日に決算認定について反対討論は次の通りです。
第103号議案「平成21年度大分県一般会計歳入歳出決算の認定」についてです。
今回約6,300億円に上る歳出決算が、地方自治法第1条の「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本と」するの目的に則していない決算となっていることをまず指摘します。 歳入決算では、国による度重なる地方交付税等の削減が行われ、地方財政は大変厳しい状況に置かれています。まず国に対し削減中止を強く求めるものです。歳入決算の中でも県税等の収入未済額が、平成20年度と比較しても県税では3億485万円も増加しています。これは県民の中に貧困と格差が拡大していることを示すものだと考えます。県民の暮らしや福祉を充実させ、それによって県税収入など自主財源が伸びる施策を取らなければなりません。日本の経済は、リーマン・ショック後急速に悪化し、その落ち込みは先進7カ国のなかで最も激しいものでしたが、大企業は、自動車や電機など輸出関連企業を中心に、純利益を4兆円から7兆円に急増させ、内部留保を1年間で233兆円から244兆円にまで膨張させました。そのなかでも手元資金は52兆円となり、「空前のカネあまり」状態となっています。 この大企業の「V字回復」は、非正規労働者の大量解雇、正規労働者の賃金・ボーナスカットや退職強要、下請け中小企業の一方的単価切り下げや発注打ち切りなど、経済危機の矛盾を労働者と中小企業に押し付けた結果にほかなりません。雇用情勢と賃金は低迷を続けています。完全失業率は5.1%と悪化したままであり、特に新卒者の就職難はきわめて深刻です。大分県でも「ある大学生は就職活動を書類審査も含め500社受けた末やっと決まった」「学校に来るのは派遣会社が多い」と新卒者がそのまま失業者になってしまうような状況があります。 本来地方自治体としてはこのような県民の疲弊した暮らしを、いかに応援し、向上させるかが問われています。しかし今回の決算を見ても、一部中小企業への金融対策の強化や子ども医療費の年齢拡大、生活道路補修など一定県民の世論に押され実施された施策もありますが、全体的に破たんした「おこぼれ経済路線」を色濃く反映させたものになっています。広瀬知事は、前県政以来134億円もの補助金をつぎ込んだ企業誘致を推進しています。しかし現実は、これまで61億円もの巨額の補助金を投入して大々的に誘致を進めてきたキヤノン関連やダイハツといった輸出大企業は、生産調整として下請けへの発注減や非正規労働者などの大量解雇を行っています。「大企業応援型」経済政策では県民の暮らしを守ることができないのはこのことからみても明白であります。そもそもキャノンは外資系の企業であり、雇用破壊で株主の配当だけは保障し、儲けは外資に回るという新自由主義経済に基づいた大企業です。アメリカに依存したキャノンや進出大企業に対し、平成21年4月より補助金を10億円から30億円まで引き上げてまで呼び込もうとする姿勢は、全くの逆立ち県政としか言いようがありません。企業は補助金があるから進出してくるのではなく、その土地の利便性や雇用確保、需要見込みがあると考えれば、自らの力で進出してきます。さらに補助金や公社への補助金などをめぐり、鹿島、大光、元県議会議長、県警元OBまでもが裏金作りや脱税で逮捕されるなど、利権構造の温床になってしまいました。補助金による呼び込みはきっぱりと手を切るべきであります。「輸出・外需だのみから内需主導への転換」は、今では常識になりつつあります。GDPの55%を占め、輸出の3.4倍の力を持つ個人消費を温めることは、内需を押し上げるうえでも、外需の落ち込みをカバーするうえでも、効果が大きいと考えます。しかしこの企業呼び込みは農業分野まで広がろうとしています。これまで大分県は平成20年度30社、21年度でも29社の企業参入が行われています。他産業から農業分野への進出がありますが、企業的農業経営だけで農業分野が成長することはあり得ません。これまで県内でも2社が破産して農業をやめています。さらに認定農業者や大規模化営農に対する支援策はありますが、家族経営に対する支援策はほとんどありません。その結果農業就業者数は平成2年に比べ平成17年度は34,665人減の54,676人となり63%も激減していますし、耕作放棄地も農林業センサスを見ても平成2年の4,966ヘクタールから平成17年度の8,013ヘクタールと6割も増加してしまっています。その上今年の米価は60キロ1万円を割る事態にもなりかねず、「このままでは来年はつくれない」と苦しい現状を訴えています。県として、企業の参入や大規模化だけを追い求めれば、当然「儲け」が主流となり儲からなければやめるということになってしまいます。大規模化した農業団体への支援もさることながら、同時に小規模の兼業農家、複合経営農家、各種の生産組織など、多様な大分県農業の実態を踏まえて、新たに市町村とも協力・連携を強めて引き合う所得補償と価格補償の確立をはじめ、多様な農家を数多く維持する施策を実態に合って進めることが今こそ求められています。今後農業の主役である生産者の意欲を高めていく予算とすることを強く求めます。
続いて教育分野においてはどうでしょうか。現場の教職員は日常業務の多忙化と人間関係及び管理強化等によって、精神疾患をわずらっている人が増えています。この10年間だけでも7割増え平成21年度は88名となっています。しかし県教委は、一昨年の教職員採用等をめぐる贈収賄事件の再発防止と称して、教育改革という名のもとで、新教員評価システムの導入や学力テストの公表指導など益々上意下達の強化を行い、教職員の管理強化を強めようとしています。これでは、ますます精神疾患が拡大する危険性があります。ゆとりのある教育環境等をつくるという県の責務を投げ捨て、さらなる学校間や子ども同士の格差拡大を助長しようとしています。そして県民は今回の事件に対し「全容解明には至っていない」「責任の所在を明らかにせよ」と納得していないのが現状です。それを放置したままで教育改革など到底できません。その上県教委は、教育リストラともいえる県立学校の統廃合の推進や学級数の縮小を地域の声を無視するかのように進めています。進路指導の先生方は「子どもたちの進路希望の枠を狭めてしまい、経済的理由で私立高校にも行けない子どもが増えてしまう」と不安な気持ちを語っていました。こういうやり方は許せるものではありません。さらに毎年「教職員定数条例」によって平成17年度から平成22年度までで706名の定数が削減されています。小中学校の非正規雇用は平成22年度で767人、県立学校では625人にも上っています。非正規を正規教職員へするためにも、また30人学級の拡大をするためにも定数の削減ではなく拡大にその方向を切り替えるべきであります。
続いて、県職員が希望を持って働くことのできる環境になっているかという問題です。
県は平成21年3月策定の「中期行財政運営ビジョン」では、総人件費の抑制として県職員を3年間で6.4%の321人もの削減計画を立てています。今でも非正規雇用の拡大や振興局及び保健所などの統廃合等で職員の勤務状態は激務になっています。精神疾患が急増している背景もここにその原因があります。そして職員の削減は県民サービスに直結する福祉部門などのサービス低下につながり、住民のニーズに素早く対応できなくなってしまいます。職員は「地方自治の本旨に基いて」住民の福祉向上のために職務をしています。この住民サービス向上を果たしていくためにも、また過密労働をなくすためにも職員の増員と正規化を求めます。しかし平成22年度も人事院は給与総額の引き下げを勧告しています。職員の生活保障と消費購買力を高めるためにも引き下げは実施しないことを強く求めます。
次に雇用を守る県政への転換
県は雇用政策として「非正規から正規への雇用転換」を大きな柱にすえ、労働者派遣法を抜本改正すること、有期雇用契約の規制を強化すること、最低賃金の時給千円への引き上げをはかることを国に求めると同時に、県として進出大企業に対し「多様な働き方もある」として派遣等を容認する姿勢をただし、立地協定書に「雇用は正規社員」を明文化すべきであります。特に大分キャノン等では平成20年11月から22年1月までで4,892人もの派遣労働者等の首切りを行いました。大企業は正規雇用の拡大ではなく、その後も短期契約の有期雇用の繰り返しで、不況になればモノのように使い捨てるやり方はとても許せるものではありません。県として進出大企業には「社会的責任をきちんと果たさせる」と毅然とした態度で臨み、異常な実態を正していくべきであります。雇用の安定に本腰を入れた施策を強く求めるものです。
次に中小企業支援策を本格的に実施する県政への転換。
今、県内の中小企業は景気後退の中、塗炭の苦しみを強いられています。「仕事が全くない」「下請け単価は何十年も変わらない」「もう後は借金返済のためには自殺しかない」といった悲痛な声が聞こえてきます。県内の倒産件数は、平成21年までの10年間で平均、年128件に上っています。これは負債総額が1,000万円以上の倒産ですから、これ以下の廃業等を加えれば大変な数の中小企業が倒産していることになります。中小企業は苦しくて社長の給料は取れなくても、従業員の給料は確保し払っています。社員はほとんどが正規社員です。中小企業は雇用を守り、地域経済や地域文化を支えている中核的存在です。
この中小企業を日本経済の「根幹」にふさわしく本格的に支援する県政とするためにも、大企業と中小企業との公正な取引を保障するルールをつくり、モノづくり産業などへの固定費の直接補助や商店街の活性化のための予算の増加、住宅リフォーム助成制度の創設などで支援を強化することが重要です。そして大分県でも中小企業振興条例を策定し、本格的な振興を図っていくことが今こそ求められます。特に最近の円高問題は、中小企業、下請け企業の経営を圧迫し、深刻な影響を及ぼしはじめています。大企業による「円高対応」を口実にした、労働者のリストラや賃下げ、下請け中小企業の単価切り下げ、発注打ち切りなど、深刻な事態が生まれています。円高は、輸出型産業だけでなく、「安い輸入品」の拡大という経路をつうじて、農業をはじめとした1次産業を含む内需型産業も圧迫しています。 国に対して円高から中小企業の経営を守る緊急対策をとるとともに、日本経済を外需頼みから家計・内需主導に改革し、「円高体質」を根本からあらためていくことを強く求めるべきであります。とくに輸出大企業がつくった日本経済の「円高体質」を是正するために、下請けいじめの速やかな是正、大企業と中小企業との対等な取引ルールの確立など、県としても中小企業の経営を守る抜本的手だてをとることを強く求めるものです。
次に社会保障政策の転換について。
国に対し社会保障の削減から本格的充実への政策転換を強く求めることが必要です。特に安心して医療を受けるために国保税の引き下げは急務となっています。しかし現状は国保が高くて払えなくなってしまった滞納世帯が37,548世帯、資格証明発行も4,468世帯となっています。これ以上の負担増は到底耐えられるものではありません。その上国も県も国保の広域化の推進を行おうとしています。広域化は、厚労省保険局長の通達でも「一般会計の繰り入れはなくし保険料の値上げに転嫁せよ」と、さらなる値上げを推進し、ますます払えなくなる人が増え、国保証の取り上げ世帯を増大させる結果になります。県として国保の広域化に反対し、年齢による差別を継続するような新たな制度としての後期高齢者医療制度の速やかな撤廃を求めるべきであります。そして誘致大企業への補助金ではなく、子ども医療費の無料化や現物給付の拡大、国保税の値下げのための独自助成、子宮頸がんワクチンやヒブワクチンへの助成、公的な介護制度の抜本的改善など社会保障を充実させる予算にすることこそ、県政の最重要課題として取り組みを強化するべきです。
日本共産党は以上のように、21年度決算の教訓に立ち平成23年度予算について、外需頼みから家計を応援する内需主導型への転換、県政の方向を大量解雇反対、雇用をまもる県政へ。そして誘致大企業への補助金の廃止や財政調整基金の350億円を活用して、社会保障の充実、疲弊してしまっている第一次産業や地場中小企業への支援策の強化を行うことを求めます。そして県民の暮らしと福祉の充実で県民所得を向上させ、安心して大分県で暮らせる平成23年度予算とすることを求め反対討論とします。
第108号議案「平成21年度大分県流通業務団地造成事業特別会計歳入歳出決算の認定について」 これは前県政の負の遺産の一つであり、職員は営業努力を重ねていますが、分譲率は1・2工区あわせて62.7%であります。売れなければ県民負担だけが残ってしまいます。これも企業誘致事業の失敗の一形態であります。
第114号議案「平成21年度大分県臨海工業地帯建設事業特別会計歳入歳出決算の認定について」 この事業も先ほどと一緒で負の遺産であります。この事業は、大企業日産への呼び込み方式の事業が破綻した事業です。大企業の身勝手な進出中止も許せませんが、確定のないまま造成工事を先に進めたという県の責任も重大であり、だれもその責任をとろうとしない。さらに売却をしようと思えば大規模な改修工事をしなければならないような土地になっています。まさに大企業奉仕の破綻であり、企業誘致事業の失敗の最たるものです。
第115号議案「平成21年度大分県港湾施設整備事業特別会計歳入歳出決算の認定について」
この決算は港湾管理と重要港湾などの施設建設を目的とした事業です。一部大企業のための事業に県民の税金投入には反対をします。
最後に第102号議案「平成21年度大分県工業用水道事業会計決算の認定について」この事業会計は、低廉で豊富な水を臨海工業地帯の大企業群に供給する事業会計です。大企業に供給している水の料金は、第一期、二期事業では1トン当たり8円80銭、三期事業でも15円80銭で、一方、一般市民の飲み水である上水道は、一般家庭で、メーター口径13ミリで1カ月44立方メートル使用したとすると、1トン当たりの料金は215円となっています。14倍から24倍もの開きがあり、汚泥処理費など勘案しても、余りにも大企業優遇過ぎるではありませんか。
大分市民の生活にとって一番大切な水利権の確保を最優先し、工業用水との水利権の見直しを行うことが大切だと考えます。
また、新日鐵、鶴崎共同動力、新日本石油などは、工業用として安く仕入れた水を船舶などへ182円から197円で転売し、飲料水として処理した後としてもこれによっても利益を得ていることは、県民にとっては納得できるものではありません。しかし県は、これを容認するという態度です。自治体として大分市民の飲料水の確保を重点とした住民本位の水道行政への転換を強く求めるとともに、また今回の決算でも、1億円を繰り出し一般会計予算の企業立地促進等基金積立金に積み立てるという内容となっています。あまりにも大企業優先の予算の使われ方です。一般財源として福祉等に使用できるよう求めるものです。